早朝のスケッチ

 春から秋にかけて早朝4時頃から散歩をする。この時間だと人はいない。冷ややかな空気の中に季節の匂いを感じる。日中は聞こえることのない、遠くを走る電車の音が聞こえる。日常が始まる前の非日常が好きだ。 散歩の途中で休憩を兼ね…

レターラック

 私は年間、約1000枚の葉書を書く。1日平均3枚ということになる。毎日書くわけではない。1日1枚という日もあれば、まとめて5~6枚という日もある。記念切手を貼りたいので官製葉書は使わない。 文具店に入ると、必ずカードを…

葉書スタンド

 旅先の友人から素敵な絵葉書を貰うことがある。万年筆のインクが鮮やかだ。この風景の中で、ゆっくりと流れる時間に身を任せているのだろうと、暫し写真を眺める。友人のことだ、今頃、美味しい酒でも飲みながら、一日の終わりのひと時…

ライティングボックス

 IRENE FROM MOTHER ON HER BIRTHDAY  NOV.8TH.1915.と刻印がある。縦23センチ、横34センチ、高さ15センチのライティングボックス。箱の中にはレターセットや筆記具・インク瓶を…

K女史からの転居連絡葉書

 「下記の住所に転居しました。近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。」 よく見る文面である。今まで一度も遊びに行ったこともないのに遊びに行ってもいいのかな…。仕事関係で知り合った人で、そんなに親しい間柄でもないけど……

満点の星空色のインク

 『ミッドナイトブルーのインク』を読まれたKさんから、このような手紙をもらった。  「あの空はもう一度見たい。あの空を見るためだけにスペインに行くのもいい。」 私はスペインに行った事は無いので想像する事すらできないのです…

ミッドナイトブルーのインク

 まだ暗闇の濃い早朝、散歩に出掛ける。 星の瞬きが見える。 静粛が身体を包む。 時折、小鳥のさえずりが聞こえる。 しかし、まだ暗くて鳥たちは飛び立つことはできない。 冷たい風を頬に感じる。この風が気持ちいい。  2019…

ダイヤストアの閉店

 アメ横をブラブラと歩くと思いがけないものに出会ったものだ。並行輸入品であったり、どこかの店の売れ残り品であったり、セミアンティーク品であったりした。それらは他ではなかなか見ることもできない品ばかりで、ワクワクしながら迷…

有安さんからの絵葉書

 「そんなことを言っていたら、いつまで経っても実現することはできませんよ!」 有安さんは言い放った。少し怒気すら感じられる言い方だった。 有安さんはアンティークショップ「飾り屋倶楽部」の店主だ。知り合って10年以上になる…

採点ペン

 1979年4月に教職に就いた。それから36年間教員として働き、2015年3月に、定年退職まで2年を残して早期退職をした。退職する際、もう使うことのないものを同僚に譲るなどして処分したのだが、一本のプラチナソフトペンだけ…