新しい絵との出合い

 今日はどのような絵に出合えるだろうか。
 美術館や個展に行く日の朝、そう思う。しかし、そう思うのは美術館や個展に行くときだけではない。散歩に出掛けるときもそう思うことがある。散歩の途中で描いているスケッチ。自分の絵なのに、どのような自分の絵に出合えるだろうかとの思いをもつことがあるのだ。
 「自分の描く絵だ。自分の絵だから、自分の意思で描いているはずだ。だから自分の絵に出合うとはなんだか変だね」と言われそうだ。
 ところがそうではないのだ。この風景を描こう、この建物を描こうとポイントを決める。そして構図を考える。私の場合はそこまでが自分で考えること。そこから先はペン任せ。どのような絵になるのだか予想もつかない。もういいかなあというところで一応完成ということにしてペンを置く。その時点で、作品を改めて見て、このような絵に仕上がったのかと把握する。これは描く側から観る側に変わる瞬間。つまり、絵との出合いなのだ。
 そうか、この風景を絵にするとこうなるのかと実際の風景と絵を見比べる。○○さんだったら、この風景をどのように描くだろうかと考えることもある。このようなことが結構楽しくて面白い。
 散歩に行く度に新しい絵との出合いがあるものだから、最近では新しい絵と出合いたくて散歩に行っているような気もしている。