萬年筆くらぶ

 万年筆の魅力に取り付かれた人たちがいます。ある人は一本の万年筆を何十年間も使い続け、その魅力を語り始めると一時間でも二時間でも続きます。ある人は一本購入すると、すぐ新しい万年筆が気になり出し気が付いたら机の上は万年筆だらけ。どの万年筆にどこのメーカーのインクが入っているのかも分からなくなっています。またある人は、古い万年筆に魅せられ、骨董屋、蚤の市を歩いて回っています。たとえ使用できずとも、探し求めていた万年筆を見つけた時はフラフラと金を払ってしまいます。
 その他にも、ペン先だけに興味を持っている人、インクに興味を持っている人、筆記具の歴史に興味を持っている人、また、自分の好きな作家が万年筆を愛用しているというだけの理由で万年筆に関心を持っている人、このように万年筆との付き合い方も色々とあるようです。
 「書く」という行為だけであれば、何も何万円もする万年筆である必要は全くないわけです。鉛筆、ボールペンと身近な筆記具がいくらでもあります。しかし、何故か万年筆にこだわってしまうのです。
 この「不思議な魅力」を持つ万年筆という筆記具を話題にするサロンをつくろうと考えました。「万年筆への思い入れ」をふんだんに語り合えるサロンをです。万年筆愛好家が自由に集い、自分たちで運営をするサロンをです。

 このような宣言をして「萬年筆くらぶ」を発足しました。1993年、万年筆が最も凋落していた頃のことです。
 高速・大容量・グローバル化を求められる今日の社会において、低速・小容量・ローカルな取り組みを重ね、万年筆の魅力、そして万年筆を使う人たちの魅力が溢れている会報誌『fuente』(フエンテ)は24年間で84号に達しました。
 私は確信しています。いくら電子文字中心の社会になろうとも、万年筆は存在し続けると。そして、万年筆に魅力を感じ、万年筆をこよなく愛する人たちも存在し続けると。