ペリカン500
机の引き出しの奥からペリカン500の茶縞が出てきた。こんな所に仕舞ってあったのかと30数年振りの再会に驚いた。 当時、ペリカンの万年筆には500、600、800の3種類があった。500は1940年代の400の復刻版で、…
机の引き出しの奥からペリカン500の茶縞が出てきた。こんな所に仕舞ってあったのかと30数年振りの再会に驚いた。 当時、ペリカンの万年筆には500、600、800の3種類があった。500は1940年代の400の復刻版で、…
実は、私は「裏紙愛好会」の会長を長いこと務めている。裏紙愛好会というのは、資源の問題や環境の問題に触れることもあるが、根底には、裏紙に「儚さ」や「侘しさ」を感じ、愛おしくて捨てることができない人間の感情を扱う会である。…
萬年筆くらぶ会員の冨澤文明さんは詩人である。「十八歳の時から詩に憑かれ、詩の営為を唯一の生き方途と信じ、そこにすべての自己証明を賭して生きてきた」と、冨澤さんの著書『夏の栞』(七月堂 一九八三年)のあとがきにある。 詩…
手紙を書く。受け取る人を思い浮かべながら語りかける。出会った人とのコミュニケーションの時間だ。便箋をたたみ封筒に入れる。糊付けして、シール(seal)とシーリングワックス(sealing wax)を取り出す。アルコール…
1880年頃のイギリスのものだと、私がよく遊びに行くアンティークショップの店主は言う。 子犬を胸に抱き、壁際に佇む婦人。幅7センチ、高さ9センチ。ブロンズの重みが掌で心地よい。壁と婦人とでは金属の成分が微妙に異なってい…
『クリスタルタンブラー』を読んだ読者から次のような手紙をもらった。 <読んで安心しました。でべそさんが、頬を伝わる哀しみの涙で切手を貼っておられるのではないかと心配していたからです。> ああ、そのような夜もあったか…
私は、深夜、ウィスキーをロックでチビチビと舐めながら本を読んだり、手紙を書いたりするのを楽しみとしている。そのゆったりと流れる時を共に過ごすパートナーとして万年筆が重要な存在となっているのだが、机上にお気に入りのタンブ…
旧国鉄のことをJRと呼べるようになるまで十年位かかった。私はJRになっても、国鉄と呼び続けた。民営化には賛成できなかったからだ。しかし、何時しか国鉄では通じなくなり、仕方なくJRと呼ぶことなってしまった。 福知山線の事…
私は年間、約1000枚の葉書を書く。1日平均3枚ということになる。毎日書くわけではない。1日1枚という日もあれば、まとめて5~6枚という日もある。記念切手を貼りたいので官製葉書は使わない。 文具店に入ると、必ずカードを…
旅先の友人から素敵な絵葉書を貰うことがある。万年筆のインクが鮮やかだ。この風景の中で、ゆっくりと流れる時間に身を任せているのだろうと、暫し写真を眺める。友人のことだ、今頃、美味しい酒でも飲みながら、一日の終わりのひと時…